「ふしだら聖女め!」と言われて辺境に追放されましたが、子どもたちとほっこり幸せに暮らします(ただし、聖騎士団長が待ち伏せしていた!)
「婚約解消の件は承知しました。ですが、一つだけ教えてください」
 リデーレは落ち着いた声で尋ねた。
「なんだ?」
 ヴィンラントは青空のように清んだ目を細くして、リデーレを睨みつける。
「なぜ、殿下は私をふしだらと呼ぶのでしょう?」
 リデーレの言葉に「ふん」とヴィンラントは鼻を鳴らす。まるで、彼女の言葉そのものが侮辱であるかのように。
「君は、自分自身が見えていないのか? 隠し子……いや、隠し切れていないか。君が抱いているその子は誰の子だ? 隣にいる女児もだ。僕の子ではないことだけは確かだが? 見れば見るほど君にそっくりではないか!」
 リデーレの腕の中には生後半年ほどの男の子の赤ん坊、アラケルが抱かれている。そして、リデーレのローブの裾をしっかりと握りしめているのは五歳の女の子、ミーティアだ。
 どちらの子も深い森に生い茂る木々のような天鵞絨色の髪、目の色も琥珀色とリデーレと瓜二つ。誰が見ても血縁関係があるとわかるだろう。
「そうですね。私の兄、デルクの子です。私からみたら姪と甥ですから、似ているのも当たり前だと思うのですが?」
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