「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
もし、彼がティアナと過ごすうちに……「彼女が欲しい」と願ったら──

私は、その気持ちを止めることができない。

「……っ」

胸の奥が締めつけられるように痛む。

どうして、こんなにも苦しいのだろう。

ただの復讐のための婚約。そう思っていたはずなのに。

なのに今は──

(まるで……まるで私は、カイルに……心を奪われてしまったみたい。)

知らずに、彼に恋をしていた。

一緒に過ごす時間の中で。優しい言葉に、ぬくもりに。

気づけば、彼のことばかり考えている。

涙が一粒、頬を伝った。

それでも私は、誰にも言えない。ただ、自分の胸にそっとしまい込むしかないのだ。

月だけが、静かに私を見下ろしていた。

それから一時経った頃だった。

「カイル殿下がお見えです」

侍女の声に、私は胸を跳ねさせた。こんな時間に?──ドアが静かに開き、夜風のように静かに、彼が現れる。

「ごめん。こんな夜遅くに。」
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