「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
私には届かない、ふたりだけの距離感。

(……私、浮かれていただけ?)

彼の心は本当に、私にあるのだろうか。

それとも──私は、彼の“帰る場所”ではあっても、“心を委ねる相手”ではないのかもしれない。

ふたりの笑い声が、春風に乗ってこちらへ届いた。

私は、何も聞こえなかったふりをして、その場を静かに離れた。

「素敵。カイル皇子と聖女ティアナ様って、並び立つとまるでおとぎ話の主人公みたいなのよね。」

控えの間に差し込む陽光の中、侍女たちの囁きが飛び交っていた。

「本当に美しい。お二人が歩いているのを見ると、物語の挿絵みたいだわ。」

「それに……聞いた?最近では軽口を言い合うくらい仲がいいんですって。」

まるで、新刊の恋愛小説を手にした少女たちのように、頬を紅潮させながら語り合っている。

私はそっと扉の影に立ち、何も言えずにその声を聞いていた。

「ねえ、結婚しないかしら。あの二人。ほんとに憧れのカップルだわ。」
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