「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
かつて、父が文官として大臣を務めていた頃。

カイル殿下は、よく我が家に遊びに来ていた。

使用人を気遣い、私の兄のように振る舞ってくれて──年は少し離れていたけれど、私は彼のことを“特別な人”だと、ずっと思っていた。

けれど、父が大臣の職を退いてからは、自然と会うこともなくなり……気がつけば、何年も過ぎていた。

だから、今こうして隣に座ってくれていることが、どこか夢のようで。

「……本当に、殿下なんですね」

「おいおい、今さら何を言うんだよ。俺は、昔からずっと“俺”だよ」

変わらぬ笑顔と優しい声音に、私は少しだけ、肩の力を抜くことができた。

「そういえば……婚約したって、聞いたけど。」

カイル殿下が、ふと思い出したように言った。

「……ああ……」
私は曖昧に笑って、苦笑いで返すしかなかった。

「婚約破棄されました。」
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