「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
その眼差しを、私は正面を向くことで振り切った。

まっすぐに私を見つめるそのまなざしが、なぜだか、今は正面から受け止められない。

「……カイル殿下は、どなたかと踊られないのですか?」

そう訊ねると、彼は肩をすくめた。

「目ぼしい令嬢もいなかったからね。踊る相手がいないなら、外で月を見るのも悪くないと思ってた。」

この殿下の目に叶うような女性って、どんな人なんだろう。

気づけば、そんなことを考えてしまっていた。

「……カイル殿下は、どんな令嬢がお好きなんですか?」

問いかけた声が少し震えていたのは、冷たい風のせいじゃない。

「うーん……」

言い淀んだ彼は、ふと手を伸ばしてきた。

その指が、私の耳の後ろにかかっていた髪の一房を、そっとすくい取る。

「控えめで、一緒にいて楽しい人──かな。」

さらりとした声。

けれどその一言が、胸の奥に小さな波紋を落とす。
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