「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
私の髪に、触れた。

彼の指先が、確かに私に触れた。

心臓が、どくんと跳ねた。

──顔なんて、見られない。

そんなこと、昔はなかったのに。

「……私なんて、地味すぎて目立ちませんけど」

なんとか冗談めかして返したけれど、彼の声は優しかった。

「目立たない花も、俺はちゃんと見てるよ。」

その優しさが、胸にじんと染みてくる。

ああ……本当に、こんな方が私の婚約者だったら。

「……あーあ。」

私は思わず立ち上がって、月夜に向かって背を向けるように歩き出す。

「殿下みたいな方と、婚約すればよかった!」

冗談まじりに言ったつもりだった。

だけど、本心だった。

たとえ一瞬でも、そんな夢を見てしまうくらい、心がくたびれていた。

──知ってる。

カイル殿下が私の屋敷から足が遠のいたのは、私と会わせないよう、父たちが気を遣ったから。

立場が違うから。

いつか、交わることのない道を歩くと思っていたから。
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