「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
カイル殿下が屋敷を後にしようとしたとき、私は思わず彼の後を追った。

玄関の扉が開けられ、馬車の準備が整うその瞬間。

私は、両親の耳に届かないよう、小さな声で話しかけた。

「……何も、本当にプロポーズしなくてもよかったのに。」

あの膝をついての言葉。

胸が高鳴ってしまった自分が、少しだけ恥ずかしかった。

殿下は振り返り、私の指先をそっと取った。

そのまま、柔らかく、けれど確かに握る。

「だますなら、身内からって言うでしょ?」

そう言って、いつものようにウィンクをひとつ。

その仕草が、あまりにも自然すぎて──私は言葉を失った。

……懐かしい。

小さい頃。

庭で転んで泣いたときも、私が試験で落ち込んでいたときも。

「泣くな」なんて言わずに、そっと笑ってウィンクをしてくれた。

「俺がついてる。」

そう言っているような、無言の合図だった。
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