「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
あのころと、何も変わっていない。

でも──今の私は、あのころとは少し違っていて。

「……ありがとう、ございます」

そう絞り出すように言うと、彼はそっと手を離した。

「それじゃ、また連絡するよ。次は……婚約発表のタイミングかな」

さらりと言って、彼は馬車へと乗り込んでいった。

胸の奥に、まだ彼の指の温もりが残っていた。

大変だったのは、カイル殿下が帰った後だった。

「……どういうことなんだ、セレナ」

執務室から戻った父が、険しい顔で私の前に立った。

その目には、動揺と怒りと、そして戸惑いが入り混じっていた。

「相手を見つけて来いとは言ったが、誰でもいいとは言っていない!」

低く抑えた声が、逆に怖かった。

でも、どうして父はそこまで……。

私の胸には、ひとつの疑問がわいてきた。

「……お父様は、カイル殿下を……お気に召さないの?」

少し震える声で問うと、父は黙って目を伏せ、ふぅーっと大きく息を吐いた。
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