「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
頭の中が一瞬、真っ白になった。

……そんな話、聞いたことがなかった。

けれど父の表情は真剣そのもので、冗談ではないとすぐにわかった。

「だからこそ……私は、お前を殿下に近づけまいとした。王族の妻になるということは──お前の人生を、自分の手で手放すことになるからだ」

父の背中が、少しだけ寂しそうに見えた。

「……それでも、私は引くことはできません」

静かに、でも確かにそう告げたとき、父の背中がぴくりと揺れた。

カイル殿下は、たとえ嘘でも、私にプロポーズしてくださった。

あの片膝をついて差し出された手を……あの、ウィンクを……私が手放したら──二度と見ることはできない。

言葉を紡ぎながら、あの夜のことが鮮明によみがえる。

優しい声。あたたかい手。

まるで夢のような時間だった。でも、あれは確かに現実だった。

私は一歩、父に近づいた。
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