「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
「私は……」

静かに口を開きながら、私はまっすぐにカイル殿下の目を見つめた。

その瞳は、何も言わず、ただ私の言葉を待ってくれていた。

「一度、婚約破棄された……価値のない公爵令嬢です」

その場の空気が、ぴたりと張り詰めた。

国王陛下の眉が、わずかにぴくりと動くのが見えた。

「ですが──」

私は背筋を伸ばし、はっきりと言葉を継いだ。

「カイル殿下の婚姻のお申し出により、私は失っていた誇りを……取り戻すことができました。感謝しても、しきれません。」

そう。

この道を選んだ瞬間から、私はもう戻れない。

たとえ最初は“復讐”だったとしても──

私は、自分の意思で、この手を取ったのだ。

「私は、カイル殿下のご意思を尊重し、その意に添いたいと、心から願っております。」

そう告げた私の言葉に、重く厳しかった空気が、わずかに緩んだ。

国王はゆっくりと、しかし確かに──うん、と頷いた。
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