「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
その瞬間、カイル殿下は大きく笑い声を上げた。

「いいね、それ。最高の“ぎゃふん”だな!」

「ええ、悔しそうな顔で、何も言い返せずに帰って行きましたよ」

そう言いながら、私自身も自然と笑みがこぼれる。

復讐のために始まったはずのこの婚約。

だけど今は、それ以上に──この人の隣で笑っている時間が、何よりも心地よかった。

「だから……もう、婚約の“振り”はいいですよ?」

思わず口からこぼれた言葉だった。

最初は復讐のための“偽りの婚約”だったのだから、これで充分。

もう、ここで終わらせてもいいんじゃないか……そんな気持ちさえあった。

けれど──

「いや、それじゃダメだよ。」

カイル殿下は、肩の力を抜いたような笑みで言った。

「本当に結婚しなかったら、あいつ──ユリウスの思うつぼだ。」

「……えっ?」

まるで冗談のように聞こえたけれど、その瞳はどこまでも真剣だった。
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