「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
本当に、結婚……?

婚約じゃなくて?

戸惑いと動揺が一気に押し寄せて、私は思わず問い返していた。

「……あの、カイル殿下は……どこまで、お望みなんですか?」

カップを持つ指が少しだけ震えた。

殿下は、そのカップごと私を包むように視線を落とし、静かに言った。

「──どこまでも、だよ。」

「……っ」

「ずっと一緒にいたい。宮廷でも、旅先でも、老いても、君の隣にいたい。子供だって欲しい。それで……最期まで、添い遂げたい。」

その声は穏やかで、誇張もなくて、ただあまりにも真っ直ぐだった。

胸の奥が、ぎゅっとなった。

これは“冗談”じゃない。“演技”でもない。

──カイル殿下の、本当の気持ち。

私は何も言えず、ただ目を伏せるしかなかった。

「……本気ですか?」

震えるような声が、自分の口から出たのが分かった。

信じられなかった。

あのカイル殿下が。

ずっと兄のような存在だった彼が、こんな言葉を口にするなんて。
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