「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
その声音は穏やかで、どこまでも優しかった。

だけど――

それって、政略結婚とどう違うんだろう?

私は何も言えずに、ただ小さく唇を噛んだ。

好きだから結婚するんじゃなくて、状況だから選ぶ……

それは、愛のない結婚と何が違うの?

でも、問いかけようとしたその瞬間。

「……私でよければ」

気づけば、その言葉が口をついていた。

「よかった」

その一言と共に、カイル殿下はそっと私を引き寄せた。

力強くはなく、でも逃げ場のないような温かさで。

「仲良くやっていこう」

その声は、まるで魔法のようだった。

甘く、やさしく、確かに心に触れてくる。

ああ――

この婚約は、きっと間違いなんかじゃない。

そう思わせてくれるほどに、カイル殿下の腕はあたたかかった。
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