「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
その数日後のことだった。

「……えっ? カイル殿下⁉」

執務中の私の元に、突然の来訪が告げられた。

今日は面会の日ではなかったはず。

私も両親も驚いて、慌てて応接間の準備を整える。

「今日はどうされたのですか……?」

彼が現れたとき、私は少し息を呑んだ。

正装ではなく、落ち着いた外出着。けれどその佇まいは、いつも通り凛としていた。

「いや……今日はただ、セレナの顔が見たくなって。」

そう言って、まっすぐに私を見つめてくださった。

その目は、からかいでも気まぐれでもない。

本当に、私という人間に会いたかった──そう言ってくれているようだった。

「まあまあ、お茶を……」と父が言いかけたが、母がそれを止めるように袖を引き、こそこそと二人で席を外していった。

「言ってくだされば、私から宮殿に伺いましたのに。」

そう言うと、殿下は少し笑って首を振った。
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