「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
「宮殿では、君はいつも少し緊張してるからね。こうして君の屋敷なら、自然な君の顔が見られるだろう?」

そして、私の肩にそっと手を回し、やわらかく抱き寄せてくれた。

「……ここにいる君のほうが、ずっと愛しいんだ。」

胸が、きゅっと音を立てるように鳴った。

「お庭でも、散歩しますか?」

室内にこもる空気に耐えきれず、私はたまりかねて立ち上がった。

応接間から庭へと続く扉に手をかける。

カチャリ――と控えめな音を立てて、右の扉を開けた、その瞬間。

反対側の扉も、同じ音を立てて開いた。

そこに立っていたのは、やはり彼だった。

「懐かしいな。」

カイル殿下が、ほんの少しだけ目を細めて微笑んだ。

「昔も、こうやって二人で扉を開けたよね。」

「……はい」

自然と、胸が熱くなる。

この扉は、何度も一緒に開けた記憶の場所だった。

兄に遊んでもらうような気持ちで、何の遠慮もなく並んでいた、あの頃。
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