「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
差し出された花を受け取ろうとした瞬間、カイル殿下はふわりと手を伸ばし、私の髪にその花を飾った。

「……これはさすがに、あの頃はしなかったけどね。」

目の前の彼の瞳が、真っ直ぐに私を映していた。

その視線が、驚くほど熱を帯びていて――息が止まりそうになる。

「……君を、ずっと見ていたよ。あの頃も……今も。」

その声と同時に、彼の手がそっと私の頬に添えられた。

そして――

ためらいなく、けれど優しく。

彼は、私の唇にキスを落とした。

目を閉じることすら忘れるほど、あたたかくて、まっすぐなキス。

頬を撫でる指先と、唇に触れる熱。

すべてが、嘘じゃないと教えてくれていた。

これは“復讐のための婚約”なんかじゃない。

きっともう、私たちは――

そして、私には――

第2皇子妃としての、本格的なお妃教育が始まった。
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