「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
「どうぞ、お構いなく。私は他の部屋に行きますので、どうぞごゆっくり。」

その言葉に、空気が和らぐ。

けれど、次の一言は――

屋敷の空気を一変させた。

「私は、セレナの部屋に行きます。」

「……っ!」

父が目を見開き、母が思わず手に持ったティーカップを取り落としそうになる。

けれど、カイル殿下は至極当然のことのように、まっすぐに私を見ていた。

「……構いませんよね?」

その視線に、誰も逆らえなかった。

ただ一つ、胸の奥がじんわりと熱くなっていく。

私の部屋へ、堂々と足を踏み入れようとする人は――この方しかいない。

私の部屋は、居間と寝室の二間続き。

仕切りの扉はなく、視線を遮るものもない。

……これは、正直困った。

まさか、殿下をご案内する日が来るなんて思っていなかったのだから。

「セレナ。」

カイル殿下が、私の居間のソファに自然と腰を下ろす。
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