「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
その仕草には一切の遠慮がなく、けれど無礼もない。

堂々と、そして当たり前のように私の空間に存在していた。

「……殿下……?」

「ここなら、誰にも邪魔されないね。」

そう言って、彼は自分の隣を指差した。

――ああ、やっぱり。

私は覚悟を決め、静かにその横に座る。

すぐ隣に感じる体温。

ただそれだけで、胸の鼓動が早くなる。

そのとき。

カイル殿下の手が、そっと私の頬に触れた。

指先があたたかくて、優しくて。

まっすぐな視線が、私の瞳を射抜く。

――ああ、キスされる。

そう思った瞬間だった。

部屋の空気が、甘く静かに満ちていた、そのときだった。

ふと――
部屋のドアのほうから、強烈な視線を感じた。

「……お、お父様⁉」

カイル殿下がすばやくドアに歩み寄り、開けると――

そこには、なんとも気まずそうな父の姿。

「こ、これはこれは……!」
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