「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
カイル殿下が上着の襟を正し、玄関に向かって歩き出す。

その後ろ姿を見送りながら、私は胸が高鳴るのを止められなかった。けれど──

「その……今時分帰るという事は……」

低く唸るようなお父様の声。ぎくりと背筋が伸びる。

ゆっくりと私に視線を向けてきたお父様と、視線がぶつかりそうで、私は咄嗟に顔を背けた。

恥ずかしくて、とてもじゃないけれど、正面から見られない。

すると、カイル殿下がくるりと振り返った。

「お父上、セレナを責めないでください。」

その声はいつになく真剣だった。そして堂々と、お父様に近づいて手を差し出す。

「セレナは俺の気持ちに、真っ直ぐに応えてくれただけです。」

握手を交わすその様子に、私は思わず目を見張った。

カイル殿下の手が、父の手を包み込むように握る。

そして、しっかりと見据えるその瞳に、父も何も言えなくなる。
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