「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
でも今は、第2皇子の婚約者――カイルの隣に立つ者として、皆の前にいる。

彼の腕の中で、私は小さく息を吸った。

そう。これは復讐ではなく、私自身が手にした誇りでもある。

「皆さん、どうぞよろしくお願いします」

そう言って頭を下げると、カイルがにっこりと笑う。

「俺の自慢の婚約者だから、仲良くしてやってね」

その一言に、令嬢たちは完全に言葉を失っていた。

ふと視線を奥へと向けると、じっと私を睨みつける視線とぶつかった。

――エヴァ・シュタインバーグ。

あの時、ユリウスの腕に収まっていた、華やかなドレス姿の伯爵令嬢。

今夜も彼女は艶やかな真紅のドレスに身を包み、周囲の視線を独り占めしている。

だが、その瞳だけが――私だけを捉えていた。

(……あの人、ユリウスと婚約したはず。なのに、どうして――)

私は静かに背を向けた。こういう時は関わらないに限る。
< 64 / 142 >

この作品をシェア

pagetop