「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
私は踊りながら、そっとカイル殿下を見上げる。

「……皆さん、私の噂をしているみたいです。」

すると、カイル殿下はにっこりと微笑んだ。

「うん、聞こえてる。君のことを素敵だって。」

「でも、私はそんな……」

小さな声で否定すると、カイル殿下は踊りの流れの中で私の手を握り直す。

「セレナ、自信を持って。君は俺に愛されるにふさわしい女性だ」

その言葉が、まっすぐに胸に届く。

私はぎゅっと唇を引き結んだあと、小さく頷く。

――もう、過去の私じゃない。

カイル殿下に愛されている私を、私は信じていいんだ。

「ありがとう……カイル。」

私がそう囁くと、彼の瞳が優しく細められた。

そしてワルツが終わると、会場が拍手とざわめきに包まれた。

カイル殿下と私の見事なダンスは、誰の目にも華やかで、そして親密に映ったに違いない。

だが──

「次は私の番よ!」

「セレナとばかり踊っていないで、私とも踊って!」
< 67 / 142 >

この作品をシェア

pagetop