「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
数人のご令嬢たちが、カイル殿下の周囲を取り囲むようにして迫ってくる。

彼女たちの瞳は、焦りと期待に満ちていた。

カイル殿下は、少し困ったように苦笑していたが、決して不機嫌な顔は見せない。

そんな彼に、私は小さく声をかけた。

「カイル。」

──呼び捨て。

そのたった一言に、ご令嬢たちが一斉に私を見る。

まるで「彼をそう呼んでいいのは誰?」とでも言いたげに。

私は微笑んで言った。

「踊って差し上げて。きっと皆さん、ずっと待っていたのよ。」

そしてそっと「ごめんね」とつぶやくと、カイル殿下は一拍の間を置いてから、私の手を離した。

「……わかった。でも、目を離さないでね。」

そう言って、彼はご令嬢たちの中へと溶け込んでいった。

私はそっとため息をつき、視線を避けるように壁際へ移動しようとした──そのとき。

「……セレナ」

誰かが私の手を取った。
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