「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
振り返ると、そこにいたのはユリウスだった。

「どこのご令嬢かと思ったよ。まさか、君だったとはな。」

皮肉めいた声と、その視線。

それは昔の馴れ馴れしさとは違い、どこか悔しさと焦燥を滲ませていた。

「ユリウス……」

私は、もうかつての私ではない。

この男に振り回される令嬢でも、媚びる相手でもない。

なのに、彼の言葉の端々に滲む未練が、舞踏会の華やかさを一瞬だけ冷たいものに変えた。

「何か御用?」

私は冷たくあしらった。けれどユリウスは、いつものように笑っていた。

「何かって……ここは舞踏会だよ?踊りに来たんだろ。」

そう言いながら、彼は私に手を差し出す。昔と変わらぬ仕草。

「僕と、踊ってください。」

困った。公爵家の子息、しかも一時は婚約者だった人。

ここで無碍にするのは、かえって目立ってしまう。

「……一曲でいいのなら」

私はユリウスの手を取った。冷たい指先に、少しだけ鼓動が跳ねた。
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