「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
「僕たちは……まだやり直せる。」

真剣な眼差し。けれど、もう私は過去に戻る気などなかった。

「……あなたには、エヴァがいるでしょ。」

冷静に言い放った私に、ユリウスは少しだけ顔を歪める。

それでも諦めないように言葉を続けた。

「彼女は派手なだけだ。中身がない。君のように心の芯があるわけじゃない。」

その瞬間、私の眉がピクリと動いた。

自分で選んだ婚約者を、そうやって切り捨てるの?

「君が僕を選ぶのなら、彼女との婚約は破棄する。」

──そんな言葉で揺れると思っているのだろうか。

私は、ゆっくりとユリウスの手を払った。

「セレナ!」

ユリウスが、我慢できないというように駆け寄ってくる。

その声音には焦りと、そして未練がにじんでいた。

「お願いだ、セレナ。考え直してくれ! 僕は本気で──」

「ユリウス、私は……」

言いかけた私の言葉を、鋭く割って入る声が遮った。
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