「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
私を見つめるその瞳は、いつもと変わらず――真剣で、真っ直ぐで。

私は一歩、カイルの横に立った。

「私は……第2皇子カイル殿下を、心から尊敬し、そして信頼しています。」

ユリウスの顔から、色が引いていく。

「もう迷いはありません。私は、彼と共に歩みたい」

カイルは満足げに頷くと、私の肩を抱き寄せ、ユリウスを一瞥した。

「聞いたな、ユリウス。これ以上、彼女に無礼な真似をするなら──王族への侮辱と見なす」

その一言に、ユリウスは唇を噛み、言葉を失った。

ユリウスが、無言で踊りの輪から姿を消す。

誰もがその空気を察したのか、何事もなかったように音楽だけが流れていた。

私は、深呼吸して気を落ち着かせる。

その時だった。

「セレナ。」

カイルは何も言わずに、私の肩をぎゅっと引き寄せ、抱きしめてくれた。

「ユリウスと踊っているのを見て……気が気じゃなかった」

その声は、いつもと違って、どこか不安を含んでいた。
< 73 / 142 >

この作品をシェア

pagetop