「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
「殿下、お疲れのようですね。」

そう言うと、カイルはふっと笑った。

「君の顔見たら、疲れなんて吹き飛んだ。」

その言葉に、思わず私も微笑んでしまう。けれど、カイルの表情が少しだけ真剣なものに変わった。

「ところで……噂を小耳に挟んだんだけど。」

「……はい?」

「最近、君――心ここにあらずだって。」

私はドキリとした。講師の言葉を、誰かがカイルに伝えたのだろうか。それとも……カイル自身が、私の様子に気づいていた?

「疲れてるのかなって、思ってた。でも違ったんだね。」

そう言って、カイルは私の頬に手を添えた。優しい眼差しが、まっすぐ私を見つめてくる。

「もしかして……俺に、何か不満がある?」

「違います、そんな……ただ……」

言葉に詰まる私の手を、カイルはしっかりと握ってくれた。

「なら、聞かせてほしい。セレナの心の声を。」
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