「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
「俺は、君のすべてが欲しいだけなんだ。過去も、今も、これからも。」

胸の奥が、じんと熱くなる。

不安だったものが、静かに溶けていくような気がした。

「君がユリウスとの婚約破棄で落ち込んでいた時。ちょうど、舞踏会があったよね。」

ふいにカイルが口を開いた。私は顔を上げる。カイルの瞳は、遠い過去を見つめるように揺れていた。

「君は必ず来ると思ってた。公爵令嬢である君が、家の体裁を保つために。」

あの夜のことが、胸によみがえる。誰とも話さず、壁際に立っていた、私。

「案の定、君は一人で、壁に寄りかかっていた。もう結婚なんてしたくないって顔で。」

私は思わず息を飲んだ。あの時の私を、カイル殿下は見ていたの?

「その瞬間、思ったんだ。今しかないって。チャンスだって。」

カイルがそっと私の肩を引き寄せる。その腕の力が、優しくて、でもどこか切なかった。
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