√スターダストtoらぶ
「行ってきます」


と言っても返事はない。

おそらく新しい男の家にでも転がり込んでいるのだろう。

お金は出してくれるけどあとは勝手にしろっていう放任主義のクズ母。

最初は寂しかったり戸惑ったりもしていたけど、こんな生活を続けていたら嫌でも慣れてきて今では親からの干渉がないのが楽でむしろ良く感じてしまう。

そんなちょっと歪んでしまったわたしに一筋の光が差し込んだ。

それはあの花火大会の帰り道。

明日が、その先の未来が、

楽しみって思えるような

花火の何倍も眩しく美しい光。

わたしはこれからその光を頼りに

明るい道へと続く暗く長い道を歩いて行って

いつかその先で待つ希望に出会うんだ。


ただ歩くだけでじっとりと汗が全身から滲み、

吹いているのは身体に触れてもベタベタと気持ち悪いだけの風だし、早く冷房の効いた教室に入りたい。


「おはよう、高橋さん」


下駄箱で靴を履き替えていたら背後から声がした。

あ、そっか…。

そう、だった…!

わたしには心を許せる人が出来たんだ。

わたしは勢い良く振り返った。


「朝雪くん、おはよう!」

「…う、嬉しい」

「いやいや、挨拶返しただけだよ。そんな…照れないでよ」


明らかにほっぺが赤くなる朝雪くん。

何か話したそうにしているけど、視線があっちこっちに泳いで定まらない。

ならば、わたしから。


「教室一緒に行こう。もちろんこれからも毎日」

「えっ…あ、ありがとう」


2人で並んで歩く。

お互い教室では浮いている者同士だから、こうやって一緒にいた方がいいし、

それより、

何より、

楽しいよ。

わたしと話しているだけでいろいろなあったかい感情が朝雪くんから生まれて来て

それを見て受け取ってわたしまでぽかぽかしてきて

これ以上ないくらい穏やかで満ち足りた気持ちになる。

こういう何気ない言動のひとつひとつの積み重ねが“幸せ”なんだろうな。

わたしはそう思ってる。

信じてる。


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