私の隣にいるのが俺じゃない理由を言え、と彼は言う
「ありがとう。……この場に、野田がいてくれてよかった」

ぽつんと、そんなふうに言った自分の声が、少し恥ずかしい。
でも嘘じゃなかった。

私は小さく笑った。

すると野田も、何も言わずに口の端だけで少し笑って、
「はいはい」みたいに肩をすくめた。

その“いつも通り”に救われた気がして、私はもう一度だけ、そっと笑った。

会議室の外から、誰かの足音が近づいてきている気がした。

でも今だけは――
もう少し、この静かな時間に包まれていたい、そんな気がした。
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