私の隣にいるのが俺じゃない理由を言え、と彼は言う
「ステージの上にいる推しを、眺めてるだけでも楽しかったよ」
「……え?」
「お前、本当に気づいてないし。可愛いし」
野田はグラスに視線を落としながら、ぽつりと呟く。
「でも――もう、推し活はやめる」
私の心臓が、どくんと跳ねた。
「……覚悟しておいて」
それは、軽く言ったようでいて、確かに響く宣言だった。
冗談でもなく、ふざけたノリでもない。
ちゃんと、野田遥人の“本気”だった。
私は言葉を失ったまま、ただその横顔を見つめるしかなかった。