私の隣にいるのが俺じゃない理由を言え、と彼は言う
翌朝。
なんだか寝不足のまま、会社に着いた。

タイムカードを押して、フロアに入ると、いつものように野田がいた。
パソコンに向かって、淡々と資料をめくっている。
その姿を見て、少しホッとして――でも同時に、胸の奥がざわついた。

「あ、昨日はお疲れ様」
私が声をかけると、野田はふっと笑った。

「おう、お疲れ」

あれ?
なんか、普通すぎない?
昨日のあの話、なんだったんだろう。

夢だったのかな。

酔って、私が勝手に盛り上がっちゃったのかな。
……いや、そんなはずない。

なのに、野田はまるで、何もなかったように、いつもの野田で。

「じゃあ、これから、商談行ってきます」

ふわっと肩に手を置かれて、またさらっと去っていく。

……え、いつものテンション。
昨日の“覚悟しておいて”って何だったの?

ついさっきまで、ドキドキしてた自分がバカみたいで、ちょっとだけむくれそうになる。
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