私の隣にいるのが俺じゃない理由を言え、と彼は言う
「また、来てくれるんだ?」
野田が、前を見たままぼそっと言った。

「うちのばあちゃん、期待してたぞ。…"あの子はいい嫁になる"って、目がキラキラしてたからな」

まるで冗談みたいに軽く言うけど、たぶん、全部本音なんだと思った。

「……や、やめてよ、そんなこと…!」

私は慌てて言いながらも、顔がかーっと熱くなっていくのがわかった。
野田はちらっと私を見て、ニヤッと笑った。

「否定しないの、珍しいじゃん」

「……」

言葉が出なかった。
本当は、また行きたいと思っている。
あのお母さんとおばあちゃんの笑顔に会いたい。
あのやわらかい空間に、もう一度触れたい。

それに——
隣でハンドルを握る、この人のことも。

「……また行ったら、変な期待されるかもよ?」

そう言うと、野田は少しだけ真剣な目になって、ぼそっと言った。

「……別に、されてもいいけど」

また、心臓が跳ねた。
この人、ずるい。
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