私の隣にいるのが俺じゃない理由を言え、と彼は言う
エレベーターのドアが開いた瞬間、私は一度深呼吸した。
気持ちを落ち着けようとするけれど、どうしても胸が騒ぐ。

オフィスフロアに足を踏み入れた瞬間――
あ。目が合った。

野田だった。
私の姿を見つけた瞬間、彼は明らかにわかるほど動揺して、そして――顔を真っ赤にした。

(……やっぱり気まずいよね)

けれど、野田はそそくさと視線を外し、あっという間に自分のデスクへ戻っていった。

私は、まっすぐに自席へ向かう。
落ち着こう、仕事に集中しよう――そう思った、そのとき。

スマホが震えた。
LINEの通知が画面に表示される。

《昨日はごめん》

たった一言。
でも、その言葉に、野田の不器用な誠意が詰まっている気がして――
私は小さく笑ってしまった。

(謝らなくても……でも、やっぱり野田らしい)

私は、すぐに返信を打った。

《大丈夫だよ。気にしないで》

「……気にしてるの、私のほうなのにね」

ぽつりと呟いたその声は、自分でも驚くくらい優しかった。

そしてそのとき、どこかでまた野田と目が合った気がして――
私はほんの少し、顔をそらした。
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