私の隣にいるのが俺じゃない理由を言え、と彼は言う
「野田!」
気がつけば、私は追いかけていた。
廊下の向こうに歩いていく背中が、なんだかいつもの野田じゃない気がして、胸がざわざわした。
小さな会議室の扉が閉まる音がして、私はノックもせずに中へ入った。
「野田…?」
彼は、背を向けていた。
だけど、私の声に、ぴたりと動きを止める。
そして、ゆっくりと振り返った野田は、いつもの軽口も笑顔もなかった。
真剣な目で、私を見ていた。
「……俺じゃない理由を言え」
――え?
思考が止まった。
「え……?」
「……お前の隣にいるのが、俺じゃない理由を言え。
この前まで、俺を見てたろ? なのに急に、ああやって他の男と笑って」
彼の声は、かすかに震えていた。
「駿介ってやつが従兄弟でも、関係ない。お前が楽しそうにしてるのが、俺には、……きつい」
そんな顔、初めて見た。
いつも強気で、俺様で、余裕そうで。
だけど今の野田は、どこか壊れそうで、不安そうで。
「……野田……」
私の声がかすれて、何も言えなくなってしまった。
彼がここまで感情を見せたのは初めてで、戸惑っていた。
「別に、無理に俺を選べって言ってるわけじゃない。でも、俺は……もう、我慢したくない」
そのとき、不意に彼が一歩、私のほうへ踏み出してきて、手首をつかんだ。
「ちゃんと聞かせて。お前の気持ち」
私の胸が、どくんと音を立てた。
逃げられない。
でも、逃げたくない。
私の気持ちは、もう――
気がつけば、私は追いかけていた。
廊下の向こうに歩いていく背中が、なんだかいつもの野田じゃない気がして、胸がざわざわした。
小さな会議室の扉が閉まる音がして、私はノックもせずに中へ入った。
「野田…?」
彼は、背を向けていた。
だけど、私の声に、ぴたりと動きを止める。
そして、ゆっくりと振り返った野田は、いつもの軽口も笑顔もなかった。
真剣な目で、私を見ていた。
「……俺じゃない理由を言え」
――え?
思考が止まった。
「え……?」
「……お前の隣にいるのが、俺じゃない理由を言え。
この前まで、俺を見てたろ? なのに急に、ああやって他の男と笑って」
彼の声は、かすかに震えていた。
「駿介ってやつが従兄弟でも、関係ない。お前が楽しそうにしてるのが、俺には、……きつい」
そんな顔、初めて見た。
いつも強気で、俺様で、余裕そうで。
だけど今の野田は、どこか壊れそうで、不安そうで。
「……野田……」
私の声がかすれて、何も言えなくなってしまった。
彼がここまで感情を見せたのは初めてで、戸惑っていた。
「別に、無理に俺を選べって言ってるわけじゃない。でも、俺は……もう、我慢したくない」
そのとき、不意に彼が一歩、私のほうへ踏み出してきて、手首をつかんだ。
「ちゃんと聞かせて。お前の気持ち」
私の胸が、どくんと音を立てた。
逃げられない。
でも、逃げたくない。
私の気持ちは、もう――