私の隣にいるのが俺じゃない理由を言え、と彼は言う

「風花、好き」

それは、もう何度目か分からないほど――
野田は、キスの合間にも、私の髪に頬を寄せながらも、何度も何度も、そう言った。

「……また、言ってる」

私は照れ隠しのように笑いながら、野田の肩に額を預ける。
でも、その言葉のたびに、胸の奥がじんと熱くなるのを、私はもう隠せなかった。

「何回でも言うよ」
「……なんで？」

「足りないから」
「え？」

「俺が風花のこと、どれだけ好きか……こんなもんじゃ伝わらない」
「……っ」

言葉が胸を打った。
熱をもった目で見つめられて、逃げられなくて――でも、逃げたくもなかった。

「……ずるいよ、野田」
「うん、ずるくていい。好きすぎて、全部欲しいって思ってる」

彼の声は低く、優しくて、真っすぐだった。
抱きしめられた腕のなかが、こんなに安心するのは、きっと、ちゃんと愛されてるってわかるから。

「風花」
また呼ばれる。
唇が触れるたびに、好きが伝わってくる。

好き。好き。好き――
何度も繰り返されるたびに、私の心はとろけて、満たされていった。

私はただ、小さくうなずいた。
「……私も、好きだよ」

その瞬間、野田の瞳がふわっとゆるんで、照れたように笑った。

「……やっと聞けた」

静かに笑うその顔が、どうしようもなく愛おしくて――
私はまた、そっと唇を重ねた。

まるで夢みたいな夜。
でもちゃんと現実で、私たちは今、ちゃんと同じ気持ちでいる。