騎士として生きてきた私が、皇子の甘い言葉に落ちるはずがないのに

第1章 私に構わないでください

騎士になったのは、この国を守りたいから。

女の身で騎士になることは、決して容易な道ではなかった。

それでも私は、小さな頃から剣を握り続けた。

「絶対に、この国を守る」

そう誓ったのは、戦争で家族をすべて失った日のこと。

両親と兄弟の無念を、この身で背負う覚悟をした。

剣術を教えてくれたのは、孤児だった私にただ一人、手を差し伸べてくれた方──

第三皇子、アレクシス・グレイフォード殿下。

あの方に出会わなければ、私は剣を取ることもなかった。

……懐かしい。
あの優しい瞳は、今も変わっていないのだろうか。

――まさか、再び出会い、心を乱されることになるなんて。

あの頃は、思いもしなかった。
< 1 / 7 >

この作品をシェア

pagetop