騎士として生きてきた私が、皇子の甘い言葉に落ちるはずがないのに
私には、レオンという恋人がいる。

宿舎が隣だという縁と、歳が一緒だということが、恋人になるきっかけだった。

「ああ……っ」

彼の肩にしがみつきながら、私は必死に声を抑えた。

「セイラ……好きだ」

何度も繰り返される熱い言葉。それに応えるように、私は身を委ねた。

激しい熱に押し流され、理性も誇りも溶けていく。

騎士としての矜持なんて、この瞬間だけは意味をなさない。

「もう……もうダメ……っ」

途切れそうな吐息とともに、彼の腕の中で果てた。

やがて彼は私の隣に横たわり、スゥスゥと寝息を立て始める。

まるで、何もなかったかのように。

私は静かに天井を見上げた。

「……レオン、本当に私を、愛してるの?」

返事はない。眠る彼の背中は遠く、私の問いをかき消すように夜が更けていった。
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