甘い独占欲と溺愛で、もう絶対離さない。


「好き……っ」


千紘くんの顔は見えなかった。
次々に溢れる涙を拭うのに精一杯で。

やっぱ情けないな、私。
ありがとうのひとつも言えないで、泣いてばかりで。

私は千紘くんに、何を返せただろう。


入学式の日、ハンカチを拾ってくれた。

羽衣と加納くんの二人の輪に入れず寂しかった私と、たくさん話してくれた。

体育祭で転んだとき、真っ先に駆けつけてくれた。

屋上に一人だった私を、たくさん探してくれた。

階段から突き落とされたとき、すぐに助けてくれた。

こうして、私にネックレスをくれた。


ぱっと思いつくだけでも、こんなにたくさん、たくさんある。

それに対して私は。私は……。

伝えたいことはきっと、〝好き〟の二文字だけだった。
ずっと、ずっと、そうだった。



「……泣くなよ」

「ごめ……」

「ちがう」


少しかすれた千紘くんの声が、すとんと私の胸に落ちる。


< 235 / 269 >

この作品をシェア

pagetop