甘い独占欲と溺愛で、もう絶対離さない。


「ん?急にやめて、どうしたの、椎葉さん」

「さ、さすがにやめようかなって」

「ふぅん?」


……言えない。

ドキドキしてた、とか。


笑顔が綺麗だと思った、とか。



***



……一度、ドキドキしていると自覚してからは、もうダメだった。


笑ってくれたり、ご飯をおいしいと言ってくれれば、ドキドキしてしまう。

私、こんなんじゃなかったのになぁ。


あれから数週間がたったある日のこと。

いつも通り瀬良くんと夕飯を食べて、最近は玄関先で別れる。


「じゃ、また明日」


そう言うと、瀬良くんは笑って軽く手をあげた。

その自然な笑顔に、また鼓動が速くなる。


まただ……っ。
なんでこんな些細なことで、ドキドキするんだろう……っ。


学校の瀬良くんは、作り笑いって感じがする。
だから、自然な笑顔はなんだか貴重だ。


「うん、また明日っ」


そう言って、私は胸元で手を振る。
ちょっとだけ、笑顔を意識して。


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