甘い記憶を溶かしたら
 愛想が良くて人付き合いもいい。遠野さんはみんなに好かれる人気者。昔からそんな風に言われることも多く、クラス委員を引き受けたり先生に頼られたりすることも多々あった。
 
 もちろん最初は嬉しくて期待に応えたいと張り切ってしまう。でも人は案外勝手なもので、持て囃すのは最初と都合のいい時だけ、いつしか当たり前みたいになってどこか便利屋みたいになってしまう。

 ――そんな風に受け止めちゃダメだけどね。

 それでも私だって人間だ。それなりに人目を気にして感じて考えてしまうものだ。期待に応えたい、それは私の勝手な思いでもそれにまた応え返してもらえたら……そう思うのは我儘なのだろうか。

 気を使う人生。
 もう少し器用に生きたいな、がもっぱらの悩みだ。年齢を重ねるほど取り繕うことばかりでなかなかうまく生きられない。ハタから見たら悩みなんかなさそうに見えているらしくそれも不本意極まりないのだけど、人はそういう生き物なのかもしれない。

 隣の芝生は……ないものねだり。
 人は人を羨んで憧れて、自分にないものばかりを求めて焦がれてしまうものなのかも。
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