甘い記憶を溶かしたら
溶け合う大人の甘い檸檬
 ふたりきりの夜の帰り道は胸がドキドキして痛いほど。でも……嬉しい、そんな気持ちに包まれていた。

「え? 莉久とですか? 会ってませんよ」
「会ってないの?」

 懐かしい名前に思わず微笑む。
 
「会ってませんよ。もう大学生になったらお互い友達も変わったし……たまに高校の時のグループで会ったこともあったけど……社会人になってからは全然」

 中高とあんなに仲良くベッタリ過ごしていたのに不思議だ。大学生になったらお互いの世界が切り離されたように綺麗さっぱりと疎遠になってしまったのだから。
 
「……そうなんだ」

 意外そうに呟く昴先輩。弟と仲良くしていなくなった私にガッカリしたのだろうか。
 
「莉久は友達も多いし多趣味じゃないですか。すぐいろんなところで友達作れちゃう人だし、大学になったら世界が広がりまくったんじゃないですか? 腐れ縁の私といるより楽しいことが増えたんですよ」
「……」
「私も友達とかバイトとか……それこそ大学で映画サークルに入ってそれが楽しくて……」
「腐れ縁ってなに?」

 ――え?

「彼女……だったよね?」
「誰がですか?」
「……遠野さん」
「誰の? ……え? 誰の?」
「……」

 ――え?
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