甘い記憶を溶かしたら
「莉久の彼女じゃなかったの?」
「……彼女じゃなかったです」
「……」
「そもそも莉久はモテるから。彼女もすごいスパンで変わるモテ男でしたよ? 大学で出来た彼女は長く続いてそうだって人伝に聞いたけど……」

 昴先輩の弟なのだ。遺伝子はしっかり莉久にも流れている。そんなモテる莉久のそばにいてもなんの誤解もされないほど私は男友達枠にいたのだ。女として嫉妬されるような立ち位置にさえいなかったわけである。

「それに比べて私は全然です。モテる莉久が羨ましい……」

 昴先輩もさぞモテるだろう。今になって隣を歩かせていただくだけで光栄……こんな名誉なことはもうないかもしれない。心の中で手を合わせていたら昴先輩が言う。

「彼氏、いないの?」
「え?」
「あ、ごめん。直球すぎた」

 慌てたように口を手で抑える姿が可愛くて思わず笑ってしまった。

「そんな。いいですよ。ふふ、はい、いません。絶賛募集中です」
「……」
「募集中、ですけど。なかなか……理想と現実はそんなに簡単じゃありません。憧ればかりだけど、恋愛から遠ざかってると自分ばっかり大事にしちゃって。うまくやれる自信もないというかって……私の方が何言ってるんだろ! すみません!」

 今度は私が両手で口を塞ぐ番だ。それに昴先輩も笑ってくれた。

「……そんな、いいですよ?」

 そこでニコリと微笑むの反則じゃないかな。

「あ、あ! こ、コンビニ! ちょっと寄っていいですか!?」

 照れ隠しに目についたコンビニを指さして行きたいアピールをしたら頷いてくれた。
< 25 / 35 >

この作品をシェア

pagetop