甘い記憶を溶かしたら
 ふたりで入る夜のコンビニ、なんだろう、なんか遠目に見たらカップルぽい? なんて勘違いするな、私。脳内でひとりで突っ込んでいたら昴先輩の声が。

「あ、これ」

 手にしていたのは私の大好きなビー玉檸檬飴。昴先輩は本当にこの飴を覚えてくれていたんだな、それを思うと胸がじーんと熱くなる。

「それを買いに来ました」
「え?」
「もうなくなっちゃうから。それはお守りというか……」

 私も手に取り袋を眺めつつポツリこぼす。

「元気もらえるんです。この飴……大好き」
「……」
「ずっと、私の中で特別な飴」
「……誰かの胸にそんなふうに残る物を作れるって最高だよな」

 昴先輩が言う。

「味の記憶ってさ、すごく深いんだよ。脳の仕組み的にも、記憶をつかさどる部分と味覚って近くてさ。…だから、ふとした瞬間に、昔の気持ちまで全部よみがえったりする」
「気持ち?」
「うん。楽しかったとか、寂しかったとか、誰かの顔とか声……味って記憶そのものみたいなもんなんだよなって」

 ――私の記憶は……ずっと……。

「新商品もそんな物になったらいいな」

 人の記憶に残せる物を、昴先輩と一緒に? そんなこと本当に叶うのだろうか、ううん……叶えたい。

「……作りたいです」

 昴先輩と一緒に。
 そこまで言葉に出来なかったけど、胸の中で確かに芽生える気持ちを抱えながらそう答えていた。
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