甘い記憶を溶かしたら
 テレビ画面の向こうで見つめ合い微笑む恋人たちはくすぐったいほど幸せそうだ。公園の芝生の上でテイクアウトしたお洒落なサンドイッチを広げてシェアして食べている。そんな何気ないシーンだけれどこんなシーンはリアルでは早々ないんだ。

 「いいな……」
 
 静かすぎるひとりの部屋で呟いたら思った以上に声が響いて自分が恥ずかしくなった。そんな風に零れ落ちてしまった思いを少し温くなった酎ハイと一緒に飲み込んでしまう。

「は、ぁ。美味しいなこれ」

 缶のラベルは結構インパクトのある太い黒文字、飛沫の中で弾けるようなレモンのイラストがポップで可愛い。

 ――レモン、か。

 (から)くても甘くても、酸っぱくたって私にとってレモンはずっと大好きな味だ。

< 7 / 35 >

この作品をシェア

pagetop