甘い記憶を溶かしたら
 最後の彼氏は大学から付き合っていた彼と社会人になって自然消滅してしまった。お互い生活リズムが掴めず合わずズレて……合わせることが出来なくなった。

 理由はいろいろあるのかもしれない、でも極論それだけの相手だったということだ。それからずっとお付き合いした人はおろか好きになった人もいない。そもそも久しく恋というものをしていないかもしれない。
 
 ひとり気ままに好きな時間を過ごす気楽な暮らしに慣れてしまったら、なかなか誰かと歩調を合わせるのも億劫になってしまった。

 一人居酒屋にハマる毎日。コンビニで好きな缶ビールとツマミを買って帰るのが日課の私なんか誰も知らないし、こんな私を知って好きになる人はいるのだろうか。

 ――思ってたのと違う、とか言われそう。実際言われたことあるもんな。

『遠野さんはお洒落なお店で年上の素敵な恋人とワインとか飲んでそう~!』
『料理も上手そうですよね。煮込み料理とか作ってくれそう!』

 ――料理苦手だし、そもそもそんなに器用じゃないんだよ。ワインなんか飲んだことないや。
 
 酎ハイを片手に買ってきたあたりめをブチッと噛み千切る様に食べながらハマっている恋愛ドラマを横目にぼんやりとそんなことを思う。
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