漂う花は、還り咲く
「……なんか、あっという間だったな」
ぽつりと、晴が言う。
「ねー」
短く返しながら、少しだけ振り返る。
さっきまでいた場所。
笑ってた時間。
全部が、もう終わったものみたいに遠く感じる。
「でも、楽しかった」
そう言うと、晴が少しだけ笑った。
「進学校の文化祭、どうだった?」
「でっかかった!!」
「そんな雑な感想言うやつが受かってんだもんなー。俺、補欠合格だったのに。」
「え、晴補欠だったの?ふーん?」
やば、って顔してももう遅いよーだ。
軽くあっかんべーしてやる。
「ちが、俺の代は倍率高かったんだよ!」
「失言して焦ってますなー」
「ちげーし!」
からかいながら、並んで校門を出る。
——もしここに通ってたら。
毎日、学校でもみんなに会えてたのかな、なんて。
ほんの一瞬、そんなことを思う。
でも。
今の学校も、今の毎日も、ちゃんと楽しい。
後悔は、してない。
「今度、うちの文化祭もみんなで来てよ!」
「ちっさすぎてびっくりするかもな?」
「そんなこと言うなら、晴だけ呼ばない!来なくていいし!」
「わりぃわりぃ」
夕焼けが、ゆっくり沈んでいく。
オレンジ色の光の中を、のんびり歩く。
「……楽しかったな」
ぽつりとこぼす。
「なぁ」
「なに?」
少しだけ間があって。
「さっき言おうとしてたこと、なに?」
「あー……えっと……」
うまく言葉が出てこない。
こういう、ちゃんとした話を晴にするの、初めてかも。
「……ほんと、勘違いだったら気にしないでほしいんだけど」
「うん」