シンユウノススメ
ムギがメイちゃんのことを大好きになった理由はちゃんとある。

メイちゃんはムギの命の恩人なの。

ムギは小五から六年生までいじめに遭っていた。
予兆があったわけじゃない。
悪夢にうなされる、みたいにある日突然始まって、昨日までの友達が全員敵になった。

仲良しグループの子に「おはよう」って挨拶しても、
雑誌に載ってたリップグロス可愛かったよね、とか話しかけても無反応。
もしかして自分が気づいていないだけで、ムギは死んじゃったのかと思った。

無視されるだけなら我慢できた。
ただ黙って時間をやり過ごしていればいいんだから。

いじめはだんだんエスカレートしていって、物を捨てられたり、机に供養みたいに花瓶の花を飾られることなんてぬるかった。
パパに買ってもらった流行りのブランドの新作ワンピースをハサミで切られた時にはさすがに泣けた。

もっと地獄だったのは体育の時間。

「二人一組を作ってください」

その言葉はムギにとっては呪いで、クラスメイト達にとっては歓喜の言葉だった。

ムギとペアなんかになったらバイ菌が移る。
暗黙の了解で誰もムギには近づきたがらない。

男性体育教師とのペアが定番になって、ムギをいじめるついでに先生は「ロリコン教師」だってオモチャにされた。
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