魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~

 獣と、目が合った気がした。
 瞳の奥にあるのは、もしかして殺意だろうか。

(おわりだ)

 その言葉が、自然と頭に浮かぶ。
 もう逃げられない。もう、ダメだ。
 誰も助けてくれない。こんな森の中で叫んだところで、誰にも届かない。

 絶望が胸を締めつける。

 けれど、そのとき。
 心の奥で、なにかが小さく光る。

(リュミの……スキル……)

 思い出す。
 自分に与えられた、たったひとつのスキル。

 スキル《ふわふわ》。
 今のリュミが縋れるのは、この力だけ。他にはなにもない。

 だから、リュミは叫んだ。

「ふわ……ふわぁっ……」

 ぽわわわわっ。

「えっ?」

 突如、魔物の体が淡い光に包まれる。
 まるで綿毛に包まれたかのように毛がふわふわと膨らみ、鋭かった牙も、鋭利な爪も、すべてが丸く、やわらかく変わっていく。
 赤く光っていた目も、いつの間にかとろんと潤んで、まるで子犬のような表情を浮かべている。

 目と目が合った瞬間──、
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