魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~
「わ、わっ……ちょっ、来ないでぇぇええええ!?」
リュミの叫びなど気にすることもなく、魔物はずんずんと近づいてきて、彼女の体にすり寄る。
どさりと横になり、くるくると尻尾を振っている。
「え……なに……?」
あまりの急展開に、リュミは動けなかった。
恐怖よりも、驚きのほうが大きい。
そして次の瞬間、リュミの頭に声が響く。
『固有スキル《ふわふわ》発動。対象、ネームドモンスター・天吼の白獣』
「えっ⁉︎ えっえっ⁉︎ スキルって……まさか、これが……《ふわふわ》……?」
あんなに恐ろしかった魔物が、今では甘えたような顔で、すりすりと体を寄せてくる。
ギャップがすごすぎて、頭が追いつかない。
魔物はうっとりとした目でリュミを見上げながら、ふわふわの尻尾をパタパタをリュミの手に当ててくる。
その毛は信じられないほどやわらかくて、あたたかくて、まるで毛布みたいだった。
「どうして、そんな顔でリュミを見てくるの。リュミはこわくて、さむくて……泣きそうなのに」
ぽろり、と涙が落ちる。
魔物はぺろりとリュミの頬を舐めた。
あたたかくて、やさしい。
「……ふふ」
なぜか、笑ってしまった。
泣きたいのに、怖いのに、でも──不思議と笑っている。