魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~
「ねえ、あなたの名前……」
口にした瞬間、自分でも戸惑った。
魔物に名前をつけること。
それは、危険で意味のない行為だと教わってきた。
理性を持たない存在に名前を与えるなんて。
そんなの、人間の自己満足だと。
(……でも、それでもいい)
そんな理屈なんて、今のリュミにはどうでもよかった。
この存在を魔物と一括りにすることが、どうしようもなくつらい。
傷つきながらも、リュミを追いかけてきてくれたこの子を。
自分の命よりも、リュミのことを優先してくれたこの子を。
ただの魔物という括りにはできなかった。
名前をつけたい。
心を込めて、想いを託して。
リュミは、目の前にいる天吼の白獣の顔をじっと見つめる。
長く濃いまつ毛に縁取られたその瞳は、まるで雪明かりを映したように澄んでいる。
ふわふわの毛並みは、冬の空に浮かぶ雲を抱きしめたみたいで──そのとき、ふと、ひとつの言葉が頭に浮かんだ。
(……ルミパッロ)
それは、雪玉を意味する古い言葉。
白くて、丸くて、やわらかそうで……でもすぐに体温で溶けてしまいそうな、儚い存在。
けれど、その儚さが美しくて、愛おしい。
「あなたのこと、パッロって呼んでもいい?」